2008年06月01日
●CHANEL MOBILE ART in TOKYO
「CHANEL MOBILE ART in TOKYO」を体験しました。
副題は「CHANEL CONTEMPORARY ART CONTAINER BY ZAHA HADID」。世界的な建築家であり稀代のスーパービジュアリスト「ザハ・ハディド」。アンビルトから現実へと次元を超えて疾走する、彼女の流れるようなラインと空間が実体化し世界を巡回し、東京に降り立つ!という作りのプロモーションで期待を一身に集めていよいよ開幕。場所は代々木競技場オリンピックプラザ、天候は小雨。
予約制なので、混雑も特になくスムーズに入場。入ってすぐのベンチで鑑賞インターフェースのZEN Playerを首に架けてもらって、簡単な説明。ヘッドフォンから流れるちょっとダミ声の女性ガイダンス(館の主?)に導かれて、一人ずつ物語の中へと旅立ってゆきます。
ロリス・チェッキーニ「Floating Crystals」とマイケル・リン「Untitled」による天と地の菱形の世界で軽くウォーミングアップ。階段を登って束芋「at the bottom」へ。底なし沼を覗き込みつつ、飛来し去ってゆく虫たちの羽音に意識が深層へと惹かれてゆきます。館の主が帰ってくるのを待って、移動。ダニエル・ビュレンのストライプゲートを潜ると、一転して暗闇。右手にレアンドロ・エルリッヒの箱庭が浮かび上がります。雪見障子のように視野を下部に限定して、水辺に映るアパート群。その窓辺に住人の動きが小さく写ります。窓に下にさりげなくCCロゴ。
再びビュレンのゲートを抜けて白い世界へ。楊福東「My Heart was Touched Last Year」の微細に変化する二つの映像。ブルー・ノージズのビックリ・段ボール箱x6。「8数えるうちに観てね」というガイダンスに慌てたら、実はものすごく間を開けたカウント。館の主も展示に合わせて茶目っ気たっぷり。その先に荒木経惟のスライド作品。映像は初見かも。
振り返るとコンテナの扉が少し開いています。その隙間から覗くとファブリス・イベール「Comfortable」。「私の部屋へようこそ」。えっ、熊さんだったんですか!?さらにイ・ブル「Light Years」。「頭の中へようこそ」。ついに頭の中まで。。。お邪魔します。。。
通路際の展示を経て、トップライトから光射す「パティオ」へ。巨大シャネルバッグに、3枚のポストカードに、ピンクの祭壇に、シャネルバッグの製作風景写真。40分に渡る「サウンドウォーク」の、見事なグランドフィナーレ。
「観る」から「体験」へ。会場全体を一つの大きな物語として構成し、それを解説ではなく「サウンドウォーク」で補助線を示しつつ体験する。これが最大の魅力。ハードウェア的に可能という次元でなく、ストレスなくその世界に没入できるところまで仕上げてくるところが流石。フォーマットは一つ、それが鑑賞者の中で無限に分岐、変容する。
ZAHAとサウンドウォークの二枚看板。プロモーションではビジュアルインパクトのあるZAHAを全面に出し、展示はサウンドウォークできっちりと仕上げる。実体験ではZAHAデザインは行き止まりのない流れるような動線として機能するものの、ビジュアルインパクトはそれほどでもない。サウンドウォークは実体験に特化した一期一会的なシステムなので、プロモーションはし難い。両者の特性を上手く組み合わせて、プロモーション、実体験とも非常に魅力的なモノに仕上げているところが巧み。
常に変化を求められるスーパーブランドのアンテナはすごい。機会ある限り、何度でも行こう。