2008年05月20日

●D.カーネギー「人を動かす」

 D.カーネギー「人を動かす」を読みました。
 簡潔で力強いタイトル、「レバレッジ・リーディング」での絶賛、春になると書店に平積みになる本。大仰な書名からして手強そうと敬遠していましたが、ちらりと立ち読みしてみて、思いのほか平易で読み易い文体だったので興味が湧きました。「動かす」より「動かされる」立場ではありますが、反対の視点も知っておこうと購入。

 構成は「人を動かす三原則」、「人に好かれる六原則」、「人を説得する十二原則」、「人を変える九原則」の四部。それに加えて、付録として「幸福な家庭をつくる七原則」が納められています。一原則ごとに一章が割り振られて、非常に平明かつ簡潔に、数多くの例を交えつつ原則を確認してゆきます。三、六、十二、九の非常に簡潔で揺るぎない構成、豊富な例を登場させつつも常に話の中心に相手の自尊心を尊重する姿勢を貫くスタンス、長丁場を全く飽きさせることなく語りきる密度。1936年初版の本を1981年に改訂、引用例を新しいものに入替、現代の読者にも親しみ易い本にしたそうですが、70年を経て古さを感じさせない作りは、不朽の名著と呼ぶに相応しい出来。技術的用語に頼らず、あくまで人を中心に据える姿勢と、絶え間なく手を入れて鮮度を保つ努力の賜物なのでしょう。この本の影響が、最近読んだ多くの本に見られることを考えると、原則モノのテンプレートと言えそうです。

 それにしても、付録の「幸福な家庭をつくる七原則」はちょっと異質。それまでアイデア豊富に人を動かしていた達人たちが、一転家庭では酷い目にあう。もうちょっと気をつけないとダメよといわんばかりのエピソード集。家庭はそれほどに手強いということ?

Posted by mizdesign at 21:41 | Comments [2] | Trackbacks [0]