2008年04月22日
●梅田望夫「ウェブ時代をゆく-いかに働き、いかに学ぶか」
梅田望夫「ウェブ時代をゆく-いかに働き、いかに学ぶか」を読みました。「世界中の情報すべてを整理し尽くす」という壮大なビジョンを掲げるグーグルを核に、ゾクゾクするようなビジョンを示した「ウェブ進化論」の続編ということで楽しみにしていた本です。
オプティミズムを貫くわけ、前作とのつながりを説明して、いざ本編へ。前作で示した「学習の高速道路の先の大渋滞」のサバイバルとして「高く険しい道」と「けものみち」の二つの選択肢を示します。「好きを貫いて生涯を送ること」を人生の幸福と定義し、高速道路を疾走する若いネット・アスリートに贈る三つの言葉が素晴らしいです。「Only the Paranoid Survive. (病的なまでに心配性な人だけが生き残る)」、「Entrepreneurship (アントレプレナーシップ)」、「Vantage Point (見晴らしの良い場所)」。
後半は、作者のこれまでを振り返りつつ生き方を探ります。「けものみち」を歩く処方箋としての「五百枚入る名刺ホルダー」を始め、かなりビジネス書方面へ舵を切ります。「正しいときに正しい場所にいる」は全くおっしゃるとおり。「好き」の強度を手がかりに生き方を開拓する「ロールモデル思考法」は梅田流サバイバル術の要。終盤は若い人へ贈る言葉を細やかに述べて完結です。
前作のゾクゾクするような高揚感に比べると、本書はやや細切れな感じがあります。どうしてかと考えてみると、これからの時代を生きる処方箋を、過去の作者の行動に求めるところがズレの原因かと思います。その一方で、ないモノを語るのだから過去を参照しつつ話を組み立てるのは当然です。そうすると、本書は続編でなく、短編を集めた外伝と捉えるのが適当かと思います。
もう一つ。本書を作者の成功体験を綴るビジネス書と捉えると、成功部分の煽りが弱い分中途半端に思えます。反対から考えると、中途半端でも論旨が完結するところが本書の特徴と思えてきます。型にはまったビジネス書でなく、今まさに生成せんとする事象を捉える徒手空拳の記。わずか240ページほどでこれだけ思索を喚起するところが、この本の最大の魅力です。
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