2008年01月05日
●Space for your future@東京都現代美術館
東京都現代美術館で開催中の「Space for your future -アートとデザインの遺伝子を組み替える」を観ました。非常に大胆に、そして明快にアートと建築の関係を提起する長谷川祐子さんがキュレーションされる展示ということで注目しておりました。
展示で抜きん出て印象に残るのが、石上純也「四角いふうせん」。4層の吹抜け空間に銀色の四角い物体がふわふわと漂います。その圧倒的なボリュームと非常に軽やかな動き、そして硬質な美術館空間との対比がピシッと決まっています。もうちょっと動くと良いのにと思いながら見ていたら、急にフワリフワリと動き始めました。何事!?と見下ろしたら、風船の最底部を男の人(ご本人?)が引っ張って動かしていました。大胆な構想と緻密な段取り、そして細やかなサービス精神が、「あなたのための未来の空間」をひしひしと期待させてくれます。
エルンスト・ネト「フィトヒューマノイド」。着るソファ(のようなソフトスカルプチャー)。蛙の着ぐるみのようなユーモラスな外観、意外と着心地(座り心地、寝心地)の良い出来栄え。広いリビングがあれば、幾つか置いておきたい一品。
マイケル・リン「無題」。正面に彩色された花模様の絵を置き、そこから増殖するように鉛筆書きで絵柄を広げ部屋中を覆っています。絵画から空間へ。非常に繊細な壁紙。
SANNA「フラワーハウス」。中と外の空間を限りなく一体化する、曲面のガラス壁、内外に点在する植栽。先日「TKG Daikanyama」で体験しましたが、視線は通すが行動は規制するウネウネ透明壁は空間としても面白い(こちらのアクリル壁は、SANNA西沢立衛さんの設計)。今回の1/2模型は実際の体験まではトレースできませんが、コンパクトな分、全景を見渡す楽しさがあります。でも普通に建築模型に思えて、アートワークとしてはハテナ。
フセイン・チャラヤン「レーザードレス」。ドレスからレーザー光線が四方八方に伸びるド派手な装置。これを着てパーティーに出れば、主役は間違いなし。光線が眩しすぎて、迷惑客として摘み出される可能性もあり。
タナカノリユキ「100 ERIKAS」。沢尻エリカ100変化。モデルも楽しそう。中央にあるたくさんの首輪を嵌めた写真が、個人的にはベスト。
蜷川実花「my room」。金魚で覆い尽くされた部屋。色彩豊かで楽しいけれども、耐えられるのは10分。
個々に観ると楽しげな展示が並んでいますが、全体の印象は意外と空疎。何でだろうと考えてみると、「空間」の意味するところが変わりつつあるのかなと思いました。
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お疲れ様でした。
あなたの未来は・・・と体験できる作品も多く
あって、楽しめました。
私は、100ERIKAの前にあった、砦のような
建物が気に入りました。
学生時代に、文化祭で作った迷路やオバケ屋敷、
子どもの時に作った秘密基地を思い出しました。
>「空間」の意味するところが変わりつつあるのかなと思いました。
未来の「空間」って、決して快適なだけでは
ないのですね。
未来の空間がこのようにバラバラなものの集合なのか、あるいはしっかりと有機的に繋がったものなのかということを考えさせられました。
個別のアートの面白さは良しとして、全体としての未来のコンセプトはかくあるべし・・・といった全体的な視点でまとめた展覧会を見てみたいです。
mizさん
こんばんは
> 全体の印象は意外と空疎。何でだろうと考えてみると、
> 「空間」の意味するところが変わりつつあるのかなと
> 思いました。
なるほど...
私はこの展覧会のタイトルの『Space』はあまり意識
しないで観てました。ただ、単に観るだけでなく、さわるとか、
視点を変えるとか、自分の体を使うところが今どきの展覧会
だなぁ...という印象です。
未来の生活空間というよりは、新しい展示空間の可能性...
そんなところに面白味を感じました...
Tak様>
こんばんは。
「レーザードレス」すごいですね。
カクテル光線を「浴びて」でなく、レーザー光線「放射して」ですからね。
斜に構えた(ように思える)展示が多い中、派手派手な未来を見せてくれました。
一村雨様>
こんばんは。
昔の未来像が「ピカピカ!」だとすると、今回の未来像は「サラリ、フワフワ、バキューン」とでも言うのでしょうか。肌触り、動作、色彩の洪水といった断片が羅列されるように感じました。別に優劣があるわけでなく、前者も有無を言わせぬ押し付けのような印象もあります。
とら様>
こんばんは。
「バラバラなのか有機的な繋がりなのか」それは多分、企画された側も知りたいのではないでしょうか。「今を捉えるために、その断片を並べて見えるようにした」のが本展であり、「後は自分で考えてね!」がコンセプトだと思います。
lysander様>
こんばんは。
そうそう、「今どき」なんです。
その集合するところを「Space」と名付けて総体がある気にさせるところがミソ。「遺伝子を組み替える」と挑発して観る者を揺さぶるのが仕掛け。「四角い風船」の建築(ボリューム、素材)とアート(美術館の中、フワリ)を入れ替えたような在り方は、まさにその体現。気がつけば、みんな術中にはまってます。
石上純也「四角いふうせん」にだまされました。大胆な建築家の発想を、構造&製造の
力で実現する事に驚かされます。
金沢21世紀美術館関係が多いのも長谷川さんゆえですね。TBお願いします。
panda様>
こんにちは。
TB&コメントありがとうございます。
こちらからも送らせてもらいます。
「四角いふうせん」を引っ張って、フワフワ動く様を見せているのが、サービス精神旺盛で良かったです。
金沢は今年行きたい美術館ベスト3の一つです。直島は行ったので、残るは豊田と金沢。