2007年06月08日

●アートで候 会田誠 山口晃展

 上野の森美術館で開催中の「アートで候 会田誠 山口晃展」を観ました。
 現代アートの売れっ子ツートップが上野に進出。フジサンケイグループがガッチリとバックアップして、波が来ている現代アート界をさらに加速せん!という感じ?

 会場に入ると、左に会田さん、右に山口さんの初期の作品が並びます。当初から会田さんは突飛な発想で、山口さんは古典的な題材を現代的な描写で描かれています。その頃の好奇心を抱えたまま大人になったようなお二人の姿に、羨望の思いが湧きます。

 角を曲がると、会田ワールドが全開です。「あぜ道」の髪の毛の分け目が道へと伸びる奇妙な連続性、「大山椒魚」のボコボコした山椒魚の皮膚と女の子の滑らかな肌のエログロの対比、「滝の絵」の水着の女の子わんさかな賑やかさ。どこかヘン、でも目が離せない。大型作品が多いので見応えがあります。

 進むと山口ワールドに。「当世おばか合戦」の骸骨に鎧を被せた巨大兵士は、ナウシカの巨神兵から結界師の黒兜まで歴史モノ漫画に欠かせぬアイテム。「歌謡ショウ図」の鏡を使った奥行きの見せ方は古典的ながら楽しい。「東京図 六本木昼図」はあの六本木ヒルズを精緻に描きながら、ヒルズと昼図を掛けるセンスにニヤリ。年始の「ラグランジュポイント」展で観た作品も並んでいます。「四天王立像」は大分筆が進んでいます。完成して名刹を背景に展示したら、ガラリと雰囲気が変わりそう。「ラグランジュポイント」の見渡す限り武将、武将、武将の眺めは何度観ても面白いです。老若男女問わず魅了する精緻な描画と、とぼけた味わいは、くせになります。

 2階に上がって「山愚痴澱エンナーレ2007」。作家の引出し総ざらえとばかりに、驚異の12分身。さすがにちょっとうす味?
 続いて会田さん。絵画は巨大ながら、かなりうす味。その先のザッピングビデオは一転特濃で、そこそこに退散。
 会場を左に折れて山口さんの「携帯折畳式喫茶室」。この手の作品は数あれど、山口さんの手にかかれば一味違います。上部抜けているのに換気用ガラリを付けたり、茶色の波板の壁に戸だけ紙を貼る作りが味があって好きです。中に上がってお茶を飲んでみたいです。

 1階に下りて、廊下伝いにギャラリーへ。会田さんと山口さんの作品が会場を半分こして並びます。山口さんの「すずしろ日記」の美しい挿絵エッセイと、持ち上げて持ち上げて最後にストンと落とす構成の妙がツボにきました。

 美術に打ち込む真摯な姿勢と確かな技量。そしてどことなくとぼけた味わいの組み合わせが絶妙で、一粒で何度も美味しい展示でした。館内が空いていたこともあり、3周しました。まだガラスケースの中に納まっていないという点でも、非常に旬な感じのする展示でした。

 上野の森美術館という名に合わせて、木立の中から見返してみました。
ueno_20070605-1.jpg

Posted by mizdesign at 2007年06月08日 01:02
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コメント

ぜんぜん違う味の二人の作品が並んでましたね。作者の都合なのでしょうが、観客の都合は?でも結構楽しみました。両方ともです。

Posted by とら at 2007年06月08日 08:28

こんばんわ。
「滝の絵」はなんだか女の子が動物に置き換え可能な感じがしました。生き生きと描かれてれる様がそう思わせてしまうんですかね。

Posted by あおひー at 2007年06月09日 01:31

新日曜美術館のアートシーンではインタビューで出てらっしゃいましたし、先日もY新聞で“どこにも属さない実力派の二人”という感じの内容で紹介されていました。気になりつつ、(また)行けないわけですが・・・(笑)。そしてブログ記事で想像(妄想?)を膨らませていただいております。感謝です。

Posted by tsukinoha at 2007年06月09日 06:34

とぼけた味わいが何ともいえず、
楽しい展覧会でした。
こういう現代アートは分かりやすくて
いいですね。

Posted by 一村雨 at 2007年06月09日 07:27

とら様>
こんばんは。
今回の展示はキュレーターなしで進められたのだそうですが、それも含めてお二人の味が良く出ている展示と受け止めました。
結局3周したので、しっかりと術中にはまってます(笑)。

あおひー様>
こんばんは。
「滝の絵」は宗教画だそうですが、とするとその宗旨は。。。

tsukinoha様>
こんばんは。
電車の中で図録を読んでいたら、表紙を見られるのが恥ずかしかったです。
このお二人は異端だったんだ!と感じた瞬間でした(笑)。

一村雨様>
こんばんは。
評価の定まらない現代アートならではの楽しみとして、感覚を共有できるかという視点があると思っています。
サービス精神旺盛で色々と楽しめる(その分散漫な印象も生む)のが現代的で良かったです。

Posted by mizdesign at 2007年06月10日 22:43

こんばんは。滝の絵は宗教画だったのですか…。また謎が一つ増えた感じです…。

>上部抜けているのに換気用ガラリを付けたり、茶色の波板の壁に戸だけ紙を貼る作り

さすがのご指摘ですね。私は絵より出ていた二本の線(?)ばかりが気になってしまいました。あの茶室でお茶を出すサービスなどあったら嬉しいですね。

Posted by はろるど at 2007年06月12日 01:39

こんにちは。
会田さんの張ったりに騙されてはいけません。
描きたいから描いた。そうです。滝の絵。
ロンドンで南アルプスの天然水を思いつつ。

あっ!それも張ったりかな。。。

Posted by Tak at 2007年06月15日 11:45

はろるど様>
こんにちは。
何教かはご自由に御想像下さいという投げっ放しな感じが面白いなと思いました。

山口さんの茶室もそうですが、テキトーに見えて成り立っちゃうところが好きです。

Tak様>
こんにちは。
騙されてますか!のっかていくのがアートの楽しみかと思いまして(笑)。

Posted by mizdesign at 2007年06月18日 07:41
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