2007年02月03日
●ダ・ヴィンチの遺言
3月20日から東京国立博物館で開催される特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ――天才の実像」に向けて予習をしよう!というわけで、日本側作品監修者の池上英洋さんの著作を2点読みました。
1冊目は「ダ・ヴィンチの遺言」(河出書房新社)。ダ・ヴィンチの生涯を、淡々とエピソードを並べつつ浮き上がらせていきます。ポイントは、先人の尊敬と情熱と誤解で作り上げられた天才像を、最新の研究に基づく合理的な判断と著者の見解でもって、等身大の人間へと塗り替えていくところ。「東方三博士の礼拝」の中断の訳、二枚ある「岩窟の聖母」の相違、「モナ・リザ」のモデル等、読みどころ満載です。平坦で読みやすい文体と、さりげなく述べられる大胆な仮説の組み合わせも油断ならなくて面白いです。ダ・ヴィンチの画集を眺めつつ読む副読本としてオススメな1冊です。
惜しむらくは、やたら派手な見出しと素朴な本文がちぐはぐなことと、全体構成が少々雑に感じられること。とってつけたようなダ・ヴィンチ・コード解説(?)章を読むにつけ、ブームに乗じた出版事情による制約が色々とあったんだろうなあという感じ。
2冊目は「西洋絵画の巨匠8 レオナルド・ダ・ヴィンチ」(小学館)。帯には「「万能の天才」の真実 すべてがわかる決定版画集-名画の感動と臨場感を、世界最高水準の印刷で再現」とあります。実際にはけっこうテキスト量があるので、贅沢に図版を盛り込んだダ・ヴィンチ絵画の解説本に近いと思います。テキストは9割がた「ダ・ヴィンチの遺言」と重複する感じですが、こちらの方が推論部分はおとなしめ。こうやって池上版ダ・ヴィンチ像が世に広まって行くのでしょう。
印象的なのは最後の2章。「さまよえる万能人」では、ダ・ヴィンチ工房の作品として何点か解説されています。この視点の導入で、これまでの唯一絶対の天才ダ・ヴィンチという世界から、彼の生きた時代へと世界が広がったと思います。「世界-Globe-の探求」では、東洋と西洋の世界観の共有を絡めることで、当時の日本の図版をはさんでいます。ダ・ヴィンチが思索した人間-地球-宇宙の世界は東洋も巻き込んで物語を紡ぐのか?今後のダ・ヴィンチ像の展開が楽しみです。
手元にあるダ・ヴィンチ本です。右から「知られざるレオナルド」、「絵とき美術館 レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「カンヴァス世界の大画家5 レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「西洋絵画の巨匠8 レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「図説レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「ダ・ヴィンチの遺言」。置場の都合でずいぶんと処分しましたが、また増えていきそうです。
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こんばんは。
いよいよ明日ですね。
まだ準備に追われていますが
なんとか体裁整えて
楽しい会にしたいと思います。
サイン本になりますね!
Tak様>
幹事お疲れ様でした。
素晴らしい会でした。
サインもいただけて、とても思い出に残る時間になりました。
どうもありがとうございました。
こんにちは。
最近展覧会等へ行けてないtsukinohaです(笑)。
がしかしこの展覧会ははずせません。
今からだったら予習できるかな〜。
『知られざるレオナルド』お持ちなんですね!
あの分厚い充実したやつですよね。
tsukinoha様>
こんにちは。
ダ・ヴィンチ展楽しみですね!
僕もオルセー展も、ギメ美術館展も行けてないのですが(笑)。
「知られざるレオナルド」は、ダ・ヴィンチの魅力を多面的に見せてくれるところが面白いですね。
池上先生の本は要点を平易に述べてくれるので読みやすくて良いです。