2006年12月17日
●アートがまちにやってくる @ UDCK
UDCK(アーバンデザインセンター柏の葉)で開催されたパネルディスカッション「アートがまちにやってくる」を聴講しました。副題は「アートとアーバンデザインの関係を考える」です。パネリストは加藤忠正さん(NPO法人アーバンデザイン研究体 理事)、池田修さん(BankART1929 代表)、松田朋春さん(スパイラル((株)ワコールアートセンター) チーフプランナー)。両者の間にどんな関係性が提示されるのか、興味深々。以下、メモです。
加藤さんの話は川越での実践について。店先のテントや自販機で統一感に欠く景色が、テントが消え、自販機の置き方に配慮し、案内板を整備することでお客さんを迎え入れる町並みへと変貌する様を、beforeアンドafterのスライドを映しながら説明。川越蔵の会という会を作っての様々な活動。町並み相談所、地域に入り込むためのお掃除イベント、蔵の町並みをアピールするカルタ制作。そしてアートイベント「ストリートミュージアム」の紹介と、その事務局が母体となってのアルテクラブの発足。修景をベースにしたまちづくり活動と、その一環としてのアートイベントという感じでした。
「蔵の保全ありきでなく、町の活性化を考えた結果として自然と蔵は守られる。」というコメントと、町並みのルールを守りつつモダンな打放し「Fギャラリー」の紹介が興味深かったです。
池田さんの話は「BankART1929」について。その名の由来、発足、施設、そして特徴へ。
公設民営の新しい可能性。公よりもらった自由度の高い「街づくりツール」、準備期間の短さもあっての「未完成」ゆえのつくりながらの活動、移動壁ユニット(w3,600xd700xh2,800)による「空間のフレキシビリティ」、雑誌撮影等への開館時間外対応のための「時間のフレキシビリティ」、ピッチャー型でなくキャッチャー型(要望を受けての)活動。
これまでの活動紹介。椅子プロジェクト、横濱モガボガを探せ!、橋をかけろ!等。ベース事業について。イベントに左右されてはいけない。フロント、スクール、カフェ、パブ、ショップは毎日やっている。横濱の持っている財産をリレーする。外から持ち込まない。最後に「Hi横濱編集局」で中田市長さんがBankART1929を訪問する回を紹介して終了。
街中に拠点を置くアート支援活動を、明快かつポイントを押さえて紹介されていました。実際に運営されている方ならではの説得力と、ユーモアある雰囲気を生み出す話術が印象的でした。
松田さんの話はアートとビジネスについて。スパイラルは(株)ワコールの文化施設。(BankART1929とは対照的に)最初からきっちりと出来ている。
ランデブープロジェクトの紹介。ビジネスとしての自立のためのプラットフォーム、プロダクト開発。ランデブーサロン、先端技術のプレゼンとアーティストの要望の場。事例の紹介、サンクステイル(商品化)、シルクウェア、ウォータドーム(構想)等。「My Sweet Home展」、家の中のものを見直す。世界最速の風呂、プレミアム ユニットバス。
アートの定義。ヴォッヘンクラウズール(WochenKlausur)の活動が示唆的、人々と議論する中で地域の問題を探り解決の糸口となる提案を行う。アーティストは作品を作る以上に、社会に影響を与える。「スパイラル大作戦」展での屋台。規則でしばる公共建築の中にパブリックはない。プライベートの中にしかパブリックはない。
氷山理論。水面上が作品、水面下が活動。活動が大切だが、作品も大切。真・美・善理論(?)。真・美・善を調停するのがデザイン。最新作、階段理論。アートは蹴上げ、デザインは踏面。2つでのぼっていく。
アートとビジネスの話を嫌味なく淡々と語りつつ、時に鋭く切り込む展開が独特で面白かったです。スパイラルでの展示の数々も目に楽しかった。階段理論は個人的に今回二番目の収穫です。そうだったのか!
UDCKより「ららぽーと柏の葉」を望む。周辺ではアートイベント「未来観測」が開催中です。ちなみに、今回最大の収穫はこのUDCK。期間限定とはいえ、このような場所が用意されることは羨ましい限りです。
UDCK内になる1/1000の柏の葉地域の模型。来年には5棟の高層マンションが出現して駅前が整います。オシャレな街になるのでしょう。
後半はパネルディスカッション。
アートとアーバンデザインについて。
加藤さん:町並の整備が軌道に乗ると、商店主さんたちも役割が分かってくる。でもどこかで息切れする時がくる。町で憩う時間を長くする、観光で来る動機になるのがアート。
池田さん:BankART1929は未完成だから成功した。アートは赤ちゃんみたいなもの。街の中に未知のものがあることは良いこと。
松田さん:アートを禁止した街は成り立つか?と考えてみる。
アーティストを呼び込むヒント。
加藤さん:身近にアートを感じる仕掛け。無料ギャラリー、ストリートミュージアム。
池田さん:良く分からない場所を作って、みんなで作っていく。パブリックとプライベートの関係を溶かしていく。
松田さん:キャッチャー型でなくピッチャー型で。ここ(UDCK)の使い方が鍵。
アートをみんなで作っていく方法。
加藤さん:ホテルのロビー等、反則的なところでアートを公開。
池田さん:都市の経験。街はリレーしていかないといけない。トップダウンからボトムアップへ。
松田さん:住み手を巻き込んでいく。スポーツ、アート等。柏の葉体操を流行らせたい。
「アートとアーバンデザインの関係」という漠然としたテーマ設定故か、切り口を求めて少々迷走気味に感じられました。もったいなかった。
質疑。私も質問させてもらいました。「新しい街「柏の葉」は魅力的だと思うのですが、話の中で既にある「柏」が全く感じられないのが気になります。柏からTXでここに来ると間に「流山」が入ることもあって、「柏」と「柏の葉」のつながりが希薄に思えます。両者をつなぐアイデアがあればお聞かせ下さい。」。今思えば、相当ピンボケな質問でした。迷走は他人事ではありません。
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アートは、興味のない人にとっては堅苦しく、難しいものです。これをどう近づけるか、がいまの美術シーンの大きな課題だと思います。いまのアート界は、間違いなく閉塞状況にあるのではないでしょうか。
>キャッチャー型でなくピッチャー型
という指摘、的を射ていると思います。
このUNCK、早速みにいってみます。有意義な情報ありがとうございました。
自由なランナー様>
こんにちは。
直感的に「あっ、面白い」と思うかどうかが分かれ目ではないでしょうか、つまるところ。
それと「何でも良い わけではない」ところがポイントだと思います、個人的には。
柏の葉駅前はちょっとオシャレ(になるであろう)くらいな街ですが、UDCKは妙に活気があって面白いです。