2006年11月11日

●ポストバブルの建築シーン

 シンポジウム「ポストバブルの建築シーン」を聴講しました。分野の異なる5人の専門家が、関連性を持たせたテーマ設定の下、バブル後の建築シーンをパラレルに語る試みです。捉えどころのないメインテーマを「パラレル」と開き直ることで、とても面白い内容になっていました。全体のレポートはこちらを御覧下さい。(お誘いいただきありがとうございました。)

 中でも面白かったのが、ヨコミゾマコトさんと藤森照信さんの話。理路整然とした筋立てにサイドエピソードを交えつつ淡々と話すヨコミゾさんと、ただ一人ホワイトボードを使って本当に楽しそうに説明する藤森さん。どちらも分かりやすく面白い。
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 ヨコミゾさんの話は、バブル期の好況時に斜に構えているうちに梯子を外されるところから始まり、指南書としての伊東豊雄「消費の海に浸らずして新しい建築はない」の存在、そして狭小住宅へと向かう流れを軽く既観して、「境界のあり方」の話へ。
 外を塀で囲み内側は緩やかに仕切る形式から、タワーマンションの増加に伴い、外は緩やかに作って内側を硬く固める形式へと変化。そんな時代の中で、建築家は周辺へと触手を伸ばす形式を試みている。例えば隣の庭の借景を楽しむとか。実例3題の紹介。紙を押すとクニャッと曲がるが、丸めた紙は強くなる。そんなつくりを繋げるように作った。狭小の場合、通常のラーメン(柱梁)構造だと住むスペースがなくなるが、鉄板で薄く包む構造だと内部が広くなる。採光に恵まれない敷地で3階建の集合住宅の計画。1階に住むイメージが湧かないので、水平に3分割でなく垂直に3分割の計画とした。屋根はテント貼り。東京ドームで使われている膜の強化版を使用。
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 藤森さんの話は、評価の高い若手建築家の住宅プランの紹介から。中心に小さくホールを設け、全周に諸室を配置する藤本壮介さんのTハウス。一見、荒唐無稽、実は究極の廊下なしプラン。居間、縁側、風呂、トイレといった諸機能を分棟化した西沢立衛さんの森山邸。昔コンペの審査で「分離派」と呼んでいたユニークな考え方(けれども入選には至らない)が現実に出現した。プランが「変」になっている。しかも施主が喜んでいる。住宅が原始化している?
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 不思議なプランと、はっきりとしない外観。その元を辿ると伊東豊雄さんの「せんだいメディアテーク」に行き着く。特徴的な「網の目構造チューブ」の中は、実は外ではないか。中を包むことで外と隔てていた壁が、ここでは反転している。内部の延長としての外部が出現した結果、境界は曖昧に。伊東建築の外観がガラスの箱なのは、境界を捉えきれないため止むを得ず。
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 とても親近感を感じる視点の設定と、要所要所での切れ味鋭い展開がバランス良くて、とても興味深かったです。

Posted by mizdesign at 2006年11月11日 10:28
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