2006年09月11日

●広重 二大街道浮世絵展

 千葉市美術館で開催中の「広重 二大街道浮世絵展」を鑑賞しました。ジョー・プライスさんが師と仰ぐ、建築家フランク・ロイド・ライトは広重の浮世絵コレクターとしても有名で、シカゴ美術館で展覧会を開いたほどです。

 二つしか現存しない広重の写生帳の一つ「甲州日記写生帳」を目玉に据え、風景画のベストセラー保栄堂版「東海道五拾三次」と、佳品の多い「木曾街道六十九次」の二大街道物が並ぶ広重の世界にどっぷりとはまる展示だと思ったのですが、実際は少々異なりました。

 展示は「木曾街道六十九次」から始まります。これが意外でした。「東海道五拾三次」の叙情性をさらに洗練させた雨・風の景に名品が多いとはいえ、続き物としては地味に思えて今一つノリません。続く「江戸近郊八景之内」と「近江八景之内」では、完成された詩的な美しさに心を打たれるうれしい誤算。特に「唐崎夜雨」の大胆な構図と静かな雨は良かったです。そして写生帳が登場します。実物は綴じてあるため、ページ毎の見開き写真のパネルが並び、中央に実物が開いて置いてあります。実物は筆のタッチも生々しく、広重が旅先で筆を走らせる様に思いが馳せます。が、その他の写真(カラーコピー?)の色味の再現性が悪くて興醒めます。技術を駆使して、本物と見紛うくらいの再現性が欲しかったです。そしていよいよ保栄堂版「東海道五拾三次」が始まります。時間と空間の変化に富んだ巧みな構成と演出、画面内を縦横に通る道の数々。後の叙情的な成熟も魅力的ですが、この頃の街道を描こうとする広重の意気込みも好きです。ここで8階の展示は終了、7階へと続きます。続き物の最高傑作の流れが切られてびっくり。7階で続きを観て終了です。単品では見所の多い展示だと思いますが、流れとして観ると疑問点が幾つか感じられました。

 余談ですが、私の卒論は広重の浮世絵を題材にしての景観の研究です。こんなのです

 これまたバブリーな千葉市中央区役所。7、8階が美術館です。
chiba_20060911-2.jpg

Posted by mizdesign at 2006年09月11日 23:03
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Tracked on 2006年10月09日 00:11

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Tracked on 2006年10月10日 01:21
コメント

早いですね!
流石です。

卒論のテーマに広重扱ったとなると
見方も全然違ってくるでしょうね。

Posted by Tak at 2006年09月12日 22:43

Tak様>
こんばんは。
今回の展示は、写生帳があることで、旅を楽しみ、ネタ集めに勤しむ広重の姿が浮かぶようでとても魅力的です。ただ、期待が大きすぎて本文では不満タラタラですが(笑)。

続きモノのメリハリの上手さで定評のある広重の二大街道モノを通覧できるのも魅力です。こちらも会場に対して不満タラタラですが(笑)。

何はともあれ、千載一偶の機会を満喫しました。

Posted by mizdesign at 2006年09月13日 01:24

こんばんは。
数カ月前に広重の写生帖が発見!と偶然観ていたニュースで知ってから、行けるかどうか微妙・・で気になっていた展覧会でした。

そうそう、ここは観賞の途中で階段降りるのでした。モノによってはびっくりの構成なんですね。

Posted by tsukinoha at 2006年09月13日 21:33

tsukinoha様>
こんばんは。
写生帳は良いですよ。
小さな手帳くらいの大きさですが、旅先でサッと取り出してサラサラと筆を走らせる広重の姿が目に浮かびます。
希少な版が混じった木曾街道を冒頭に据える展示順も分からないではないですが、東海道をぶった切るのは。。。
「江戸近郊八景之内 池上晩鐘」も良かったです。

Posted by mizdesign at 2006年09月14日 01:21

おはようございます。
行ってきました!ということで、TBさせてくださいませ。
展示のせいか東海道が大雑把に見えましたが(笑)、やっぱり浮世絵版画は間近で見るもんですね。行ってよかったです。

Posted by tsukinoha at 2006年10月04日 05:45

tsukinoha様>
こんばんは。
コメントとTBありがとうございます。

奇想の画家の大攻勢の前に影の薄い広重ですが(笑)、
写生帳を間に挟んで浮世絵を楽しめる今回の企画はなかなかのモノだと思います。
ブツ切りの展示方法は?でしたが。。。

ガンバレー、千葉市美術館!

Posted by mizdesign at 2006年10月05日 00:39

こんばんは。

強風吹き荒れる中
やっと行って来ました。

いやー期待以上の展覧会でした。
良いです。
まだ記事書いていませんが興奮しております。

Posted by Tak at 2006年10月08日 20:06

Tak様>
こんにちは。
エントリー読ませてもらいました。
本展の魅力が分かりやすくまとまってますね。
ピント外れな当方の感想がお恥ずかしい。

学生の頃に研究室の合宿で妻籠、馬籠、奈良井と回ったのですが、そんなことも含めて興味深い展示でした。

Posted by mizdesign at 2006年10月09日 09:57

こんばんは。
何と広重が卒論繋がりでいらっしゃいましたか!
これは必見の展覧会でしたでしょうねえ…。
また見方も違うかと思います。

>技術を駆使して、本物と見紛うくらいの再現性が欲しかった

ちょっと安っぽかったですよね。
貴重な品なので、もう少し見せていただけばと…。

>バブリーな千葉市中央区役所

バブリーですよねえ。行く度にそう思います。
周囲の寂れた商店街ともまた釣り合っていなくて…。
千葉の中心街も少し寂しいですよね。

Posted by はろるど at 2006年10月10日 01:37

はろるど様>
こんにちは。
コメントとTBありがとうございます。

写生帳と二大街道物が揃う本展は、「広重展」としてもう少しショーアップして欲しかったなあという気持ちが先立ってしまいます。
あの建物を見ると、建物の派手さと、展示面の弱さが際立ってなおさら。。。

でも、千葉市美術館が頑張っていることは良く伝わってくるし、写生帳が見られたことも大きな収穫でした。

Posted by mizdesign at 2006年10月19日 10:12
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