2006年08月17日
●パブリックアートとはなにか?
7/7に建築会館で開催された「パブリックアートとはなにか?」と題した講演会の聴講メモです。10月下旬から札幌芸術の森美術館及び世田谷美術館で開催される「空間に生きる 日本のパブリックアート」展の開催記念フォーラムという位置づけです。建築とアートを行き来すると世界が広がりそうで魅力を感じるのですが、その実、両者の接点は曖昧です。パブリックアートも同様で、そのものズバリなタイトルに惹かれました。
□基調講演。
世田谷美術館館長酒井忠康さん。パブリックアートという言葉はなんとなく定着した。近すぎて反発、敵対といってもいいくらい弱いアートがいじめられる。私たちは生き残れるのだろうか。モエレ沼公園の紹介。感銘を受けた例として、マルタ・パン「浮かぶ彫刻3」とモニク・フォー「芸術が都市を開く」の紹介。砂澤ビッキ「四つの風」は腐食も作品の一部と捉える。越後妻有ではイリヤ&エミリア・カバコフ「棚田」がきっかけとなって耕作放棄された棚田が見直された。
□トークセッション「いち押し!私のパブリックアート」。
法政大学工学部教授渡辺真理さん(建築家)。パブリックアートは造語、最小限で定義すると art in public space by public。パブリックスペースとは?アメリカ大恐慌の際に federal art という芸術家救済政策の成果として登場(?)。plaza law (容積率の緩和)、percent for art (アート費用の義務付け)といった政策へと繋がってゆく。いち押しは大阪万博お祭り広場。「広場」を人工的に6ヶ月間作り、入場者数は64,218,770人。
東京芸術大学先端芸術表現科教授たほりつこさん(アーティスト)。記憶を呼び起こす/物語。誰のため/時空を超えてゆく。アメリカの記念碑/1980年代に戦争に負けて英雄から一人一人を認めるように。リチャード・セラの作品が住民訴訟で撤去/住民との対話の必要性。誰もがアクセスできる場所=パブリック。自作の紹介。
世田谷美術館館長酒井忠康さん。ダニ・カラヴァンの作品を紹介。テル・アヴィブでの展示、砂漠の真ん中にとんでもないもの。札幌芸術の森、自然の扱いが優しく(上手く)なった。室生山上公園、アートワークで世界をつくり直した。思索の深さを感じさせる優しさ。田植の感動の再発見。
佐藤総合計画副社長細田雅春さん(建築家)。現代建築が変わりつつある。世界のボーダーレス化に伴い、四角い箱 (Rigid) から色々なものがルーズになっている。建築とアートが近づいている。○○化ではない、共に堕落してしまう。両方がせめぎあう、緊張感が存在する関係。コラボを目指す。
神奈川県立近代美術館企画課長水沢勉さん。モニュメント、記憶の装置。ミハ・ウルマンの図書館(ベルリン)。強化ガラスの下に書架。何の邪魔もしないが、感じさせる。記念碑は過去を向いている、記憶は未来を向いている。
□フリートーク。
細:アートと建築、都市の関係に興味。
酒:柳田国男の伝説と昔話。位置を存在させるもの/つまみぐい。グレン・グールド、一般大衆のための調節をしない。パブリックアート、拒絶する力。堕落に気をつけろ。パブリックの力に直面する。
た:建築とアートの融合、統合はありえない。自然を飼い慣らす都市、建築 vs アート。建築が出来ないことをやる。
渡:1970だからできた、今はできない。記憶に沿って見せるものが必要。例えば教会。アーティストのインスピレーションが必要。
水:芸術家、テンション vs パブリック。空間を受け入れる素地はあるか?
細:空間の問題。何かを感じる関係性。
た:都市、建築。生命体の記憶が弱くなっている?忘れていいことが何かも分からない。
□質疑
Q:都心のパブリックアートの例は?
渡:国内の例がないのが問題。
□感想
危機感を前面に押し出した「基調講演」で始まり、多彩な視野の広がりを感じられる「一押し」を経て、会話は全く噛み合わないが個々の力技で話を推し進める「フリートーク」へ。エンジンが暖まった頃合で時間切れという感じでした。講演としては「結局危機とは何を指していたのだろう?」という疑問で終わりましたが、ライブとしてはとても面白かったです。パブリックアートを取り巻く環境は複雑なんだというメッセージ(?)はすごく伝わりました。
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でもないけど。装飾のほかには、少し重くする効果がある。それより、手前に倒れそうで。-----弥富市.2007.03 [続きを読む]
こんにちは。
大変興味深い講演内容ですね。
これだけの記事アップされるの
さぞかし大変だったでしょう。。。
テープ起こしとか必要ですね。
じっくり読ませていただきました。
Tak様>
こんにちは。コメントありがとうございます。
講演会というよりもトークバトルに近かったですが、
パネリストの方たちの切れ味が良いのでとても面白かったです。
たぶん展示の内容とはほとんどリンクしてないと思いますが(笑)。