2006年07月02日
●もやしもん
「もやしもん」が面白いです。菌を見る力のある大学生の主人公が、強烈な個性を持つ教授や院生や学部生たちに囲まれて展開する某農大を舞台にしたキャンパス漫画です。が、本当の主役はかわいく擬人化?された菌たち。ピンポン玉のような菌たちが「かもすぞ」とワラワラと画面を漂う絵を本屋さんで見た人も多いのでは。
副題は農大物語、英名は「Tales of Agriculture」。作者の石川雅之さんの緻密な話作りと細かく描き込まれた絵柄と相まって、何度も読み返してしまいます。コメディ調の展開を追ううちに、人間と菌の切っても切れない関係、切れないなら仲良く付き合おう、堪らなく美味しそうな日本酒というふうに興味が広がります。菌が跋扈する世界を描くことでこんなに面白い世界が開けることをイメージできた作者の構想力と、それを伝えようとする努力が凄いなあと思います。
建築好きとしては、校舎を改装して発酵蔵を作るくだりが好きです。湿気への配慮からコンクリートと木の壁材としての適不適を盛り込んだり、密閉度の高い住宅の欠点に触れたり。巨大ステンレス流しに水勾配を付け忘れる部分は、さすがにそれはないだろうと思いましたが。せっかくの一枚モノのステンレス鏡面仕上を、わけあってスチールたわし磨き仕上に変更するエピソードは笑えます。
もやしもんの欄外には、菌一つ一つのプロフィールが掲載されています。単体だと読み飛ばすだけですが、本編中の彼らの活躍?と合わせて読むと面白さが倍増します。モノの性質や仕組から話を組み立てることは、結果重視の今日では軽視されがちな部分ですが、切り方と見せ方でいくらでも上手く伝えられるという好例だと思います。農業が一区切りついたら、建築の世界も切ってもらいたいものです。
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.mizdesign.com/mt/mt-tb.cgi/314