2006年07月14日
●没後30年 高島野十郎展
三鷹市美術ギャラリーで開催中の「没後30年 高島野十郎展」を鑑賞しました。柏市増尾にアトリエを構えたという話を聞いて、これは行かねばと思いました。
展示は4章からなります。入口を入ると「青年時代」です。若き日の自画像が並びます。暗いトーンの中、袈裟と鋭い眼光が印象的です。次いで「欧州時代」。ヨーロッパでの風景画が並びます。明るめのトーンに旅先での感動が伝わるようです。そして帰国後の絵画を展示する「慈悲としての写実」。「朝霧」は画面中段に三本の木が描かれています。それぞれの濃淡を書き分けることで、朝の霧を描写し、画面に奥行きを与えています。まるで絵が呼吸しているようです。画題も馴染みある新宿御苑や、奈良の寺々が登場して引き込まれます。中でも「雨 法隆寺塔」は縦に引いた雨線が美しく、ザーッという音が聞こえるようです。その一方で何気ない自然の描写も素晴らしく、「菜の花」の素直で大胆な構図、「流」の水と岩場の表現には目を見張ります。最後が「光を蒔く人」。太陽を描き、月を描き、最後は蝋燭の炎を描いた絵が並びます。写実的な描写と相まって、こんなにも光が描けるものかと驚きます。部屋を暗くし、絵だけに照明を当てて、蝋燭の炎の臨場感を高める演出も効果的です。
空気や光といった、目には見えないモノを意欲的に描く姿勢と、その技術には驚くばかりです。増尾の田と里山の風景がとても新鮮に見えるようになりました。
もうじき始まる「柏市所蔵美術品展」では、高島野十郎の作品を含む10数点が展示されます。場所は中村順二美術館、会期は7/19-7/30です。詳しくはこちらをご覧下さい。
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チケットを購入する受付。娘の姿を見て「三鷹市内の小学校ですか?」と聞かれてたので「いいえ」... [続きを読む]
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三鷹市美術ギャラリー(三鷹市下連雀3-35-1 CORAL5階)
「没後30年 高島野十郎展」
6/10-7/17
「美術散歩」のとらさんのエントリを拝見... [続きを読む]
こんにちは。
TBありがとうございました。
こういう画家がいたことにとにかく驚きでした。晩年増尾にいたということでさらに驚きでした。絵を観ていると野十郎の生きざまがじわじわ迫ってくるようでした。
こんばんは。先日はどうもありがとうございます。
またTBとコメントありがとうございました。
>増尾の田と里山の風景がとても新鮮に見えるようになりました。
そうですよね。在りし日の東葛の原風景とでも言ったところでしょうか。
>柏市所蔵美術品展
先日仰られていた展覧会ですね。ご情報ありがとうございます。
会場は大津が丘ですか…。ちょっと駅からは無理ですね。
それにしてもリンク先の静物画も素晴らしい作品です。
三鷹の展覧会は盛況のようですが、
この回も盛り上がると良いですね。
tsukinoha様>
こんにちは。
増尾か!と思って観に行ったのですが、そんなこと抜きにして見応え十分でした。でもやっぱり我孫子でなく増尾なのは嬉しいです。都内から適度な距離の辺鄙な田舎を探した結果なのでしょうが(笑)。
はろるど様>
こんにちは。先日はありがとうございました。
僕は彼が手賀沼でなく、里山と田圃(谷津田)の風景を描いたところがとても好きです。目に映るモノをありのままに観て、美しさを見出すその眼力と描写力は、凄いです。
柏の展示は、できれば柏駅からエレベーターで直行できる柏市民ギャラリーでやって欲しかったです。三鷹の例でも分かるように、アクセスの良さは凄く大切ですよね。。。