2006年06月29日

●Steven Holl 展 「Luminosity / Porosity」

 ギャラリー・間で開催中のSteven Holl 展「Luminosity / Porosity」を鑑賞しました。Luminosityは光、Porosityは孔を意味し、ひいては、建築と都市化とランドスケープの一体化を追求しているそうです。ここでも「あな」が登場します。

 展示は写真と模型によるプロジェクトの紹介と、原寸?パネルによる体験型展示の二つからなります。3階展示室が前者、中庭から4階展示室が後者です。図面や建物全景を捉えた写真が全くないので、「建物」という感じが全然なく、光と孔を巡る思索の軌跡を追体験する感じです。特に4階のセットモデルのような展示が興味深いです。様々な開口パターンを施した皮膜で形成された街路を歩き、時に建物の中に入ってそのパターン越しに外を眺めます。機能を抜き去り、光と孔だけを残した体験は、廃墟のようであり、豊かな空間にも感じられます。

 詩のようなテキストと空間を行き来するひと時でした。

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2006年06月27日

●縮小都市の診断、その処方箋 -perforation(穿穴)-

 高齢化社会と経済成長の鈍化。社会構造が変化するときに、「都市」はその変化にどう対応するのだろうか。住宅もビルも都市の一部なので、都市像を踏まえた提案をしたいと常に思っています。そんなときに「第24回TNプローブ・サロン 縮小都市の診断、その処方箋 -perforation(穿穴)-」という講演会案内が目にとまりました。「縮小都市」というストレートな現状認識と、「穿穴」というキーワードの組み合わせに興味が湧きます。

 講師は千葉大助教授の岡部明子さん。EUの地域政策、環境政策を研究されているそうです。講演は「ライプツィヒ」と「バルセロナ」における都市再活性化の事例が紹介されます。市が改築費として50%の補助金を出しても誰も活用しなかったが、建物を撤去して中庭を作ったところ、建物オーナーもイメージアップに関心を示すようになった。間にはさまれるエピソードが具体的で興味を深いです。その上で、両者とも建物を減らすこと(穿穴)によって価値を高めるという点が共通していると指摘されます。

 手法としては昔からあるモノですが、それを穿穴と見立て、建物を減らすことが都市の価値を高める=経済活動の一環(資本の拡張)として捉えられないかと提起する流れはとても刺激的です。その根底には楽観的な視点が感じられ、都市論は本質的にアカルイモノであると思いました。

 会場は品川インターシティでした。黒々とした木々と光を放つ高層タワーのコントラストが特徴的?
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2006年06月26日

●カルティエ現代美術財団コレクション展 その1

 東京都現代美術館で開催中の「カルティエ現代美術財団コレクション展」を鑑賞しました。「カルティエ現代美術財団」といえば、ジャン・ヌーベル設計による本部ビルが真っ先に思い浮かびます。ガラススクリーンの中に自然を活けたようなデザインは、突き抜けた美しさと存在感を誇ります。その財団のコレクション展と聞けば、期待は高まるばかりです。

 展示はライザ・ルーの「裏庭」から始まります。ビーズで埋め尽くされた人造自然というべきオブジェは、異様な美しさに満ちています。その向こうに楽しげに作品作りを進めるアーティストの姿が浮かぶようで、思わず口元がほころびます。リチャード・アーシェワーガーの「クエスチョン・マーク/3つのピリオド」は、裏側に回り込んだり見上げたりしてフォルムの変化を楽しみ、ベンチのようなピリオドに腰掛けたい誘惑に駆られます。そしてロン・ミェイクの「イン・ベッド」の存在感に立ち尽くします。巨大な母親像?肌や髪の毛の驚異的なまでにリアルな質感と、スケールが異なる違和感が激しくせめぎあいます。そして目と目で見つめあう絶妙の位置関係。現代美術の魔法にどっぷりとはまります。

 2階に上がると、松井えり菜の絵と遭遇します。引きの強い絵柄が、ソレが何であるかを認識するよりも早く脳に到達し、絵の脇に置かれたエビチリ(カビてる?)に目がいくに至って、グロテスクさが押し寄せます。見事な時間差にしばし呆然。3階に上がるとトニー・アウスラー「ミラー・メイズ」の巨大な目が一斉にこちらを見ます。球形に張ったスクリーンとプロジェクターで出現する眼球ゴロゴロ空間は、昔テレビの特撮番組で観た異次元空間のようです。デニス・オッペンハイムの「テーブル・ピース」は一転、長いテーブルと両端の人形、そこから発生(するように見える)奇声だけのシンプルな構成です。広い空間に長いテーブルが映えます。

 一気にB2階まで降りると、吹抜空間にマーク・ニューソンの「ケルヴィン40」が駐機しています。独創的で美しいフォルムと、「本物」のモックアップとしての徹底的な作り込みが素晴らしいです。エアフローの解析図や屋外写真も存在感を強調します。何よりコクピットに乗り込んだ本人の写真が良いです。夢の究極の到達点でしょう。中庭にはパナマレンコの潜水艦が鎮座しています。生々しい溶接の数々、鉄塊の圧倒的な量感、内部の緻密な作り込み。アーティストの構想と執念がビシビシ伝わってきます。中庭を海底に見立てた配置も決まってます。

 全編見所に溢れた、現代アートファン必見のスーパーイベントです。
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2006年06月22日

●時差ボケ解消?

 昨夜は、厚さ5cmほどの図面の束を抱えて宅配便の集配所に駆け込みました。思った以上に長びいた図面の手直しがようやく完了しました。ぐっすりと眠って、目を覚ましたのは午前4時。早く起きすぎたので寝なおそうとして一思案。明日も4時起きなら、このまま起きて時差ボケを解消するか。というわけで図らずも明日に備えることにしました。自動的に時差調整とはさすがはワールドカップ?奇跡を見せてくれ!

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2006年06月16日

●虎ノ門 金刀毘羅宮

 再開発されたオフィスビルと敷地を共有する神社。ビルの足元を三層吹抜のピロティとして参道に開放、参道をクランクさせることで奥行きを演出。ビル街のオアシスとしてたいそう繁盛しています。

 オープンスペースがまるごと神社というゾーニングは、聞くと冗談のようですが、実際にはとても成功しています。神社は日本の一部だなと妙に納得します。

 オフィス街に唐突に現れる鳥居。「なんだこれは」と引き込まれると、右手に神社が現れます。
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 反対側の大通りからの眺め。3層吹抜けのピロティが効果的です。
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2006年06月06日

●花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第3期

 「花鳥-愛でる心、彩る技 第3期」を鑑賞しました。今回は、若冲が熱心に模写して学んだという中国絵画が並んでいます。中でも目を引くのが「百鳥図」です。鳳凰を中心に、「動植綵絵」でおなじみの鳥たちが大集合しています。鳳凰の特徴ある容姿と色彩の類似性は、若冲のネタ帳か?と思うほどです。これらを下敷きにして、あの豊かな表情と見栄きりポーズの若冲ワールドが出現するのかと想像がめぐります。

 「動植綵絵」は比較的おとなしめな作品が並びます。その中で異彩を放つのが「紫陽花双鶏図」。緻密な描画と華麗な色彩、凄みのあるポーズとりと三拍子揃った若冲ワールドの決定版のような一枚です。紫陽花が空を覆っていたり、羽に水滴のような模様があったり、鶏が頭を掻いていたりと不思議要素もテンコ盛りです。何度も見返してしまいます。

 見比べという点では「竹粟に鶉雀図」と若冲「秋塘群雀図」も興味深いです。題材に共通点が多いですが、絵の印象は全く違います。スタンプ押しのような飛行形の雀、塘の穂に群がる様々な姿勢をとる雀。一羽混じる白雀。やはり若冲のアレンジは面白いです。

 湿度低めで過ごしやすい日でした。展示もおとなしめに思えました。
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●アート・スタディーズ 第6回

 建て替えが進む東京を歩いていると、建物の寿命って意外と短いのではと思うときがあります。そんなときに目にとまったのが「アート・スタディーズ/20世紀日本建築・美術の名品はどこにある?」。全20回かけて、20世紀建築・美術を通史的に検証、発掘を試みるレクチャー+討議イベントです。いろいろと興味深い話が聞けそうだと直感したので、遅ればせながら第6回から参加することにしました。

 今回は1930年代を題材に、「和洋統合の精華」というテーマで進みます。建築は吉田五十八を取り上げ、堀口捨巳との違い、ミースとの比較を通して考察します。美術は須田国太郎を取り上げ、黒田・安田・梅原との違いを踏まえて彼の取り組みを紹介します。「DNAレベルの再構築」というキーワードでもって両者はつながります。吉田は「古典」をミースに通じる近代の「合理性」でもって再構築し、須田は油彩絵画を材料、性質に立ち返りヴェネツィア派を参照して再構築します。同時代の建築と美術に共通項を設定して、専門の方に語ってもらう試みはとても興味深いです。相乗効果を生むところまでは行きませんが、一粒で二度美味しいに近い感じ。先日ハウス オブ シセイドウのミニシアターで須田国太郎の初個展(1932年)の再現CGムービーを観たのが良い参考資料になりました。

 会場は東博資料館でした。窓から平成館が見えます。もうすぐ「プライス展」です。
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