2006年05月08日

●花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に> 第2期

 「花鳥-愛でる心、彩る技 第2期」を鑑賞しました。今回は多彩な鶴の描写に興味がそそられて、会場を何度も回って見比べました。
 入口を入ると「群鶴図屏風」が目に入ります。金地にモノトーンの鶴がズラズラと並び、一風変わった雰囲気を醸しています。バーク・コレクションの「大麦図屏風」と似ている?中ほどに行くと狩野探信「松薔薇に鶴・竹梅に鶴図」、円山応挙「双鶴図」が並び、見慣れた「絵画の中の鶴」に出会います。特に後者のクリクリッとした眼の正面顔、気持ち良さそうに目を細める横顔、ペタリと胴に沿う翼、柔らかな足先の描写は絵としての鶴を消化し尽くした感があります。そしてクライマックスが伊藤若冲「動植綵絵」の一つ、「梅花群鶴図」です。黒の点目に、細く伸びる嘴、その中に生える歯、フグの薄造りのような翼。なにより画面左手に顔だけ出してエロ目で笑う(?)表情の豊かさ。とても生々しく、薄皮を剥ぐかのような細密な描画、それでいてとても美しい世界。あれも鶴ならこれも鶴、くらくらします。

 絵画の伝統を支えたのは狩野派や応挙なのでしょうが、奥行きを広げたのは若冲なのだろうと思います。広げすぎて明治の人には底なし沼に思えたかもしれませんが、時間を経て現代に至れば、その影響(?)が漫画や劇画に垣間見られて面白いです。

 大手門をくぐって見返したところ。日に日に緑が濃くなってきます。
tokyo_20060503-1.jpg

Posted by mizdesign at 2006年05月08日 06:59
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コメント

こんばんは。
入ってすぐの「群鶴図屏風」は
どうしても目がとまりますよね。
あれも凄い作品だと思います。

その対面に若冲の鶴が・・・
絵になります。三の丸尚蔵館。

Posted by Tak at 2006年05月08日 18:56

こんばんは。
ほぼ同時刻の記事アップですね(笑)。
漫画や劇画・・同じ様な感想をもたれていたとは奇遇です!

娘は「群鶴図屏風」の絵がいちばんすきだと言っていました。
迫力満点でした。

トラックバックさせていただきますね。

Posted by tsukinoha at 2006年05月08日 21:00

Tak様>
 「群鶴図屏風」の素朴な線+金地にモノトーンの色彩は、若冲の超細密な線+超美麗な色彩と対称的ですね。その間に当時の佳作を並べる構成は狙ってるんでしょうね。「動植綵絵」が植中心だったのでバランスを取っているのでしょうか。なかなか芸が細かいです。

tsukinoha様>
 トラックバックありがとうございます。
 現在の若冲人気の一翼は、漫画劇画の普及が担っていると思うんですよ。見慣れている表現と、それを遥かに凌駕する凄みを併せ持つ若冲は、親しみつつ深入りできる存在なのではないでしょうか。そのうちダ・ヴィンチあたりで「時代に若冲が追いついた」とかって特集組みそうですね。

Posted by mizdesign at 2006年05月09日 07:19

こんばんは。私も先日この展覧会へ行ってきました。
五回全部制覇するつもりで、気合い入れていってます!

>エロ目で笑う(?)表情の豊かさ

そうですよね。やっぱりエロイですよね。あの目は。
一体あの鶴は何を思うのか。
全く目立たない場所にいながら侮れません。

>その影響(?)が漫画や劇画

私も若冲にはアニメーション的な表現の萌芽をみたいです。

>ダ・ヴィンチあたりで「時代に若冲が追いついた」

やりそうですね!!

Posted by はろるど at 2006年05月27日 01:37

ハロルド様>
 こんにちは。
 エロ目にふぐ刺し、精緻な描写に華麗な色彩。本当にあの発想はどこから来るのでしょうか。

 懐古でなく、今観て面白い若冲。プライス展と合わせて、これからが本番ですね。すごい楽しみです。

Posted by mizdesign at 2006年05月28日 11:31
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