2006年02月27日
●前川國男建築展
学生の頃は、日本の戦後建築というと丹下健三さんに目が行きがちでした。最近は世田谷区役所の広場が気になったり、上野の東京文化会館前を通って東京都美術館へ行くことも多いので、それらの設計者であり、丹下さんの師でもある前川國男さんへの興味が膨らんでいます。というわけで東京ステーションギャラリーで開催中の「前川國男建築展」に行ってきました。
修行時代から、独立後のコンペ連戦、戦後の資材不足の中での住宅との格闘、皇居端の美観論争、そして様々な大規模建築を次々と手がける巨匠の時代へ。50年余に及ぶ設計活動の足跡を図面と写真と模型で辿っていきます。骨太で少々素っ気ないデザインの数々を見ていると、そういう時代を土台として現在の軽やかなデザインの流行があるのかなと思います。そして日常生活の中で出会う機会の多いところに前川建築の力を感じます。
内容は申し分なしですが、構成は少々散漫な感じでした。「結局美観論争はどうなったんだ?」とか、「最小限住宅の前ふりを晴海高層アパートや阿佐ヶ谷テラスハウスで受けてくれないの?」とか。先日見た「吉村順三建築展」がよく出来ていただけに残念。
美観論争の地にバンバン超高層が建つ現状は、建築を取り巻く状況が急速に変化している現れだと思います。
2006年02月21日
●ニューヨーク・バーク・コレクション展
個人の視点で綴られる通史の面白さにハマリ気味なこの頃です。複雑化、分業化、専業化の時代だからこそ、全体を見渡す視点に惹かれるのでしょう。知識に裏打ちされた大胆さに、ユーモアを交えるのが現代風。というわけで、「ニューヨーク・バーク・コレクション展」に行ってきました。副題は「日本の美 3000年の輝き」です。
縄文土器から始まる展示は、実物で観る日本美術の教科書のようです。でもちょっと隠し味がある感じ。「霞というよりもオーラ」とか「竹も踊っている」という説明文にクスリとしたり、白描源氏物語絵巻を裾に入れて持ち歩いたという話にヘーッと思ったり。前半のクライマックスは、地下1階から1階への吹抜けを4面の屏風絵が囲むところでしょう。「大麦図屏風」の大胆な画面構成、「柳橋水車図屏風」から「扇流図屏風」へと連続する水流の上を飛ぶが如く渡る橋の空間性、「四季草花図屏風」の繊細な描写。中央に置かれたソファからなかなか離れられません。畳座敷だったら日が暮れるまで居付きそうです。
1階に上がると、伊万里焼角瓶の鮮烈な色彩とスラリとした形態が目に入ります。陶器と屏風絵がズラリと並び、心はすっかり桃山・江戸時代にトリップしています。宗達、光琳、抱一と観てすっかり堪能した気になったところで、ポスターの絵を観ていないことに気付きます。そういえば若冲も。。。
というわけで2階へ上がります。本展の顔、蕭白のところから「かわいいー」という声が聞こえます。「石橋図」というよりもサインペンでキュッキュと描いた101匹ワンちゃん大行進という感じです。江戸時代にこの絵を描いたらさぞ変人だったろうなあ。最後は若冲の「月下白梅図」と「双鶴図」で〆です。こちらからは「さすが若冲は違う」という唸り声が聞こえます。月下に光る梅の美しさ、鉄筋に卵を挿したような鶴のアウトライン。確かに!
近くで観ると漫画チックな101匹ワンちゃん大行進。。。
離れると、ちゃんと江戸時代の絵に観えるところが不思議。自転車で美術館巡りがうらやましい。。。
2006年02月16日
●日本美術の歴史 (購入編)
こちらのレビューを読んで、とても面白そうなので買ってきました。「日本美術の歴史」(辻惟雄著、東京大学出版会)。図版たっぷりの軽めの本と思っていたら、実際にはけっこう厚みのある通史本だったのでちょっと怯みました。こういうときに背中を押してくれるのが口コミの力ですね。現場通いのお供に少しづつ読みます。読了編は桜の散る頃の予定。
レジに積んであったバーク・コレクション展の栞ももらってきました。あっという間に会期も後半。終了間際は混むので、そろそろ行きたいところです。