2005年11月27日
●法隆寺宝物館
法隆寺宝物館は、東京国立博物館の敷地の中でも少し奥まったところに建つ、端正な顔立ちと光の宝石箱のような内部空間を持つとても美しい建物です。設計は谷口建築設計研究所、施工は大林組、竣工は1999年です。
ガラスの箱の中に石貼りの展示室を収め、その外側に大庇を廻して中と外を繋ぎます。その明確でダイナミックな構成は、訪れるものを魅了します。水盤に浮く橋を渡り、澄み渡る青空をスパッと切り取る大庇の下、ガラススクリーンをくぐって内部へと至ります。
ガラスの箱と石の展示室の間は「内部化したオープンスペース」となっています。細い方立てが効果的で、柔らかい光に満ちています。左が石貼りの展示室、右がガラススクリーンです。静寂の空間に見えますが、実際には1階レストランのカチャカチャという音が反響して都会の雑踏のような雰囲気です。ここらへんも「オープンスペース」らしくて私は好きです。
2階より中2階の資料室を経て1階へと続く階段。方立ての影が館内を柔らかく包み込みます。法隆寺回廊の連子窓の影を連想させます。
資料室の休憩コーナーです。ガラススクリーンの向こうに水盤、そして錦秋の眺め。計算し尽くされた空間構成です。ソファはコルビュジェ、椅子はイームズ。谷口さんの中では今もモダニズムの時代が続いているのだろうなと少しセンチになります。
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谷口さんの設計作品を上野で堪能できる幸福を、ぼくも以前に感じました。谷口作品の素晴らしさについては、おそらくぼくよりぼくの長男のほうが堪能したことでしょう。喰い入るように仏像一体一体を観ていました。
モダニズムに括られてしまうのでしょうが、そんなことがすっ飛ぶ建築だと思いました。
佐藤K様>
「括る」のは評論家の仕事なのでそれほど関係なく、「止まろうとする」ことにちょっとセンチになるのです。設計に携わるモノとして。
こんにちは。
次はここを訪れるためにだけでも、東博行くのもいいかもと思いました。1999年生まれの娘を連れて。ゆっくりできないかな(笑)。
tsukinoha様>
法隆寺宝物館は建物も展示も本当に魅力的なところです。水盤の反射が大庇に映り込む午前中がお勧めです。普段は空いているしロビーも広々としているので、お子さんと行っても大丈夫ですよ。
ちなみに僕は代官山のヒルサイドテラスA、B棟と一つ違いです(笑)。
あら、アテネ・フランセと同い年でした。ぼくは。
佐藤K様>
吉坂さんの建物とは接点がないまま今に至っています。見てない建物ってけっこうありますね。
建築意匠の王道(そんなのがあるのか知らないけれど)を進まれると、吉阪さんはスルーかもしれませんね。
早稲田出身か、よっぽどの変わり者でないと・・・このへんにしておきましょうか。