2005年06月09日
●明治神宮御苑花菖蒲之頃 1991
浮世絵の視点から見る「今」の五回目です(一回目、二回目、三回目、四回目)。
明治神宮御苑は、江戸時代は加藤家、井伊家の下屋敷の庭園だったそうです。花菖蒲が植えられたのは明治30年なので、この風景も江戸時代にはありませんでした。今回紹介する三つの場面は、「移ろいの風景論」(小林亨著 鹿島出版会)の中で、五感を用いて体験する移ろい景観の体験場の代表例として登場します。日付は1991年6月20日。本の元になった論文を読んで興味を持ち、体験に行きました。余談ですが、先に紹介した青山アパートメントはこの後に訪れています。徒歩10分の素敵なタイムトリップでした。
奥にあるのが隔雲亭です。以下、「移ろいの景観論」からの引用です。「開け放たれた戸口から雨線・草木の濡れ(視覚)、外気(触覚、嗅覚)、屋根の雨音(聴覚)が体験される。建物内で婦人が茶を飲んでいる。五感的体験の稀な例である。」(引用終わり)
東屋へと向かいます。以下、引用です。「傘をさしながら東屋へ向かう。視覚的体験にとともに、雨による濡れと雨音などが体験されている。」(引用終わり)
この写真は、本の中の写真よりも引いた構図になっています。画面中央に橋を配しての画面分割は、少し浮世絵を意識したのだと思います。
以下、引用です。「aの状態から移動し、濡れと傘をさす行為から開放されて視覚的体験を楽しむ。この種の景観体験の典型が雨宿りである。」(引用終わり)。文中のaは前の写真を指します。
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? 042 いずれあやめかかきつばた from たまゆらデザイン日記
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空気感が伝わる風景に、息を吸い込みたくなります。花菖蒲は雨がお似合いですね。
この頃は、四季の変化を楽しむ感性は私たちの根っこの部分なので、消えることはないと思っていました。最近の景色の激変ぶりや四季の崩れっぷりを見ていると心配になってきます。